自民党の改憲草案では、現憲法の根幹となる二つの事項を「破棄」しました。
「破棄」した最大のものは、侵略戦争への反省、不戦平和の誓いです。
目本国憲法前文はまず、
「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうに」
と、国民の不戦の決意を示し、同時に
「・・平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」
と、国際平和の実現のために、民族自決権、他国の国家主権を尊重することをうたいました。これは、人類が二度の大戦を経て確立した「普遍の原理」で、国連憲章にも通じるものです。
自民党改憲案は、これらの規定を「ユートピア的」などとしてすべて破棄。「日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り」と、国民に国土防衛を求める規定を創設しました。
破棄したもう一つは、
「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」
とした「平和的生存権」です。
ここでは、戦争こそ人権に対する最大の脅威であり、平和であってこそ人権保障も可能となるとしたうえで、「恐怖」からの解放、すなわち「自由」と共に、「貧困」からの解放をめざす理念がこめられています。
自民党改憲案では、平和的生存権の保障に代えて、「家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」と明記。まさに国の社会保障の責任を否定して、国民の自助・自立を説く「憲法」なのです。