門前ビラ

デュポン社の安全診断を生かしながら、「労災ゼロ」は会社の責任ある安全対策が決定的

デュポン社の安全診断を生かしながら、「労災ゼロ」は会社の責任ある安全対策が決定的

2015年5月23日

デュポン社とは

 JFEスチール西日本製鉄所倉敷地区で溶鋼漏れによる重大災害が発生しました。被災された方の一日も早い回復を願うものです。一方、東日本製鉄所でも、休業、不休災害が続発しています。JFEスチールは「労災ゼロ」をめざし、アメリカの化学会社デュポン社に、安全診断と指導を依頼し、いまその活動の只中にあります。

デュポン社によるJFEの安全診断―
「安全は全てに優先する」が実践されていない

 安全診断の結果は、JFEの安全文化は「反応~依存型」でワールドクラスの「相互啓発型」には程遠く、「安全は全てに優先する」が現場で十分実践されていなかったとして、100点満点の46点でした。
 また、安全指導では、「『すべての災害は防ぐことができる』という強い信念を持つ」、「フェルトリーダーシップ(感じる、感じてもらうリーダーシップ)を理解し発揮する」ことで「反応~依存型」から「相互啓発型」に引き上げることを期待するというものです。
 具体的には、経営者・管理者に対するセミナーの実施、指摘型パトロールから対話型パトロールへの転換、事故調査制度の再構築、安全監査制度の確立があげられています。
 安全意識を高めることは労働災害を防ぐ基礎であり重要です。また、パトロールや事故調査の改善は、労働組合からも指摘されており、即刻行うべきです。
 しかし、デュポン社のこの診断では、労働災害の直接の原因と背景(作業方法、要員、設備、生産量、技能)、なによりも会社の責任について示されておらず、診断は不十分と言わなければなりません。

「基準書」どおりの作業ができる 環境を整えることが重要

 労働災害はいろいろな要素が重なっておきますが、もっとも重大なことは、作業基準書どおりの作業が行われていなかったことが主な原因になっていることです。
 なぜ作業基準書どおりの作業ができないのでしょうか。
 要員不足で忙しすぎる、成果主義のもとで効率を上げないといけない、老朽化で設備が安定的に稼動しない、生産第一主義のもとでトラブルが起きても減産をしたくない、など原因と背景となる要素のすべてを究明する必要があります。
 そのためには労働災害が発生した時の対応も重要となります。
 労働災害の原因を作業者の安全意識だけに狭めるのではなく、原因と背景を徹底的に究明し、会社の責任で対応することが必要です。
 間違っても被災者本人に責任を押し付け、経営者や管理・監督者の責任を回避するような事故調査であってはなりません。

「労災ゼロ」は会社が従業員の安全を守る責任を果たしてこそ

 JFEスチールは安全活動を安全意識啓発の問題だけにするのではなく、自らの責任で、次のような具体的な安全対策を行うべきです。
① ゆとりある要員を配置、作業基準書を守って作業できるようにする
② 故障やトラブル発生時には、設備を停止して対処するようにする
③ 労働者がミスをしたり、うっかり手を出しても、設備が自動的に停止するなど、絶対にケガをしないよう本質安全化を図る
④ 事故調査制度の再構築をおこない、事故原因と背景をより正確に追究し、労働者の行動や安全意識の問題に矮小化しない
⑤ 危険が多い関連企業の安全確保に向けて支援を強化する
 安全な職場をつくることは安定的な操業にとっても不可欠であり、企業の利益にもつながります。
 「安全は全てに優先する」をスローガンだけにせず、全ての職場・作業につらぬき、会社、労働組合、職場が力を合わせて「労災ゼロ」の職場をつくりましょう。

20150522デュポン・労災ビラ完成版